トレンドマイクロ(4704)は買いなのか?
私は現時点で注目している銘柄の一つです。
本記事では、有価証券報告書や決算資料などの会社IRをもとに分析し、最後に私自身の投資判断をまとめます。
トレンドマイクロは、「ウイルスバスター」の会社として知られていますが、現在は法人向けサイバーセキュリティ事業が主力となっています。
AIの普及により、企業を狙ったサイバー攻撃は年々高度化しており、サイバーセキュリティ市場は今後も成長が期待される分野です。その中で、トレンドマイクロが今後も競争力を維持し、成長を続けられるのかに注目しています。
2025年度は、売上高2,759.8億円、営業利益577.8億円、営業利益率20.9%と、高い収益性を維持しています。
一方で、2025年度の配当は185円、配当性向は約70%と株主還元にも積極的です。
高い株主還元は魅力ですが、サイバーセキュリティ業界は技術革新が速く、継続的な成長投資も欠かせません。
そこで本記事では、
- トレンドマイクロはどのような会社なのか
- なぜ今注目されているのか
- 業績や財務は健全なのか
- 株主還元と成長投資は両立できているのか
- 現在の株価は投資対象として魅力的なのか
これらを一つずつ確認し、最後に私自身の投資判断をまとめます。
トレンドマイクロはどんな会社?
トレンドマイクロは、1988年に設立されたサイバーセキュリティ企業です。
個人向けセキュリティソフト「ウイルスバスター」で広く知られていますが、現在は企業や官公庁など幅広い顧客に対して、サイバーセキュリティソリューションを提供しています。
近年はクラウドサービスの普及やAI技術の発展により、サイバー攻撃はますます高度化しています。
企業では、パソコンだけでなく、
- サーバー
- クラウド環境
- メール
- ネットワーク
- エンドポイント(PCやスマートフォンなど)
を含めた総合的なセキュリティ対策が求められるようになりました。
トレンドマイクロは、このような幅広いIT環境を一元的に保護・監視するセキュリティソリューションを世界中で提供しています。
また、有価証券報告書によると、売上高の約9割を海外が占めており、日本企業でありながらグローバルに事業を展開していることも大きな特徴です。
私が注目しているポイント
私がトレンドマイクロに注目した理由は、「AI関連銘柄だから」ではありません。
AIの発展によってサイバー攻撃はさらに高度化し、それに対応するためのセキュリティ対策の重要性も高まっています。
つまり、
AI市場の拡大は、サイバーセキュリティ市場の拡大にもつながる可能性があります。
その中で、トレンドマイクロが今後も競争力を維持し、持続的な成長を実現できるのかを確認したいと考えています。
なぜ今トレンドマイクロが注目されるのか?
企業にとって最も怖いのは、サイバー攻撃そのものではなく、事業が止まることです。
一度サイバー攻撃を受ければ、
- 顧客情報の流出
- システム停止による事業への影響
- 身代金(ランサムウェア)の要求
- 企業イメージの低下
- 多額の復旧費用
など、経営そのものを揺るがすリスクにつながります。
近年では、大企業だけでなく中小企業や自治体、病院なども標的となっており、「うちは狙われない」という考え方は通用しなくなっています。
さらに、AIの普及によってサイバー攻撃はこれまで以上に巧妙化しています。
例えば、AIを悪用したフィッシングメールは文章の精度が向上し、人が見分けることが難しくなっています。また、攻撃の自動化が進んだことで、短時間で多くの企業を狙うことも可能になりました。
そのため企業では、
「攻撃を受けないこと」ではなく、「攻撃を前提として、いかに早く検知し被害を最小限に抑えるか」
という考え方へ変化しています。
このような背景から、サイバーセキュリティは「コスト」ではなく、事業を継続するための重要な投資として位置付けられるようになっています。
私は、この市場環境の変化がトレンドマイクロにとって大きな追い風になっていると考えています。

業績分析
業績分析
企業を分析するうえで、まず確認したいのが業績です。
単年度の数字だけでは、一時的な好不調なのか、それとも継続的に成長しているのかは判断できません。
そこで、まずは過去5年間の業績推移を確認してみます。
過去5年間の業績推移
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 |
|---|---|---|---|
| 2021年12月期 | 1,903億円 | 436億円 | 384億円 |
| 2022年12月期 | 2,238億円 | 313億円 | 298億円 |
| 2023年12月期 | 2,487億円 | 326億円 | 107億円 |
| 2024年12月期 | 2,726億円 | 481億円 | 344億円 |
| 2025年12月期 | 2,760億円 | 578億円 | 345億円 |
※出典:トレンドマイクロ IR(有価証券報告書・決算資料)

売上は着実に成長
売上高は2021年の約1,900億円から、2025年には約2,760億円まで拡大しました。
サイバー攻撃の高度化やクラウド利用の拡大を背景に、企業のセキュリティ投資は増加傾向にあります。その追い風を受けながら、トレンドマイクロも着実に事業規模を拡大していることが分かります。
2023年の当期純利益は一時的な要因
グラフを見ると、2023年だけ当期純利益が大きく落ち込んでいることが分かります。
一見すると業績が悪化したように見えますが、これは本業の不振が主な要因ではありません。
会社のIR資料によると、株主還元方針の変更に伴い、海外子会社からの配当に関する繰延税金負債を追加計上したことで法人税等が増加し、当期純利益が一時的に押し下げられました。
そのため、本業の収益力が急激に低下したわけではなく、2024年には当期純利益も344億円まで回復しています。
2025年は利益面でも大きく改善
2025年は売上高2,760億円、営業利益578億円となり、営業利益率も20.9%と高い水準を維持しました。
売上の拡大だけでなく、利益もしっかり伸ばしていることから、事業の収益性が高まっていることがうかがえます。
私が注目したポイント
私が注目したのは、売上が右肩上がりで成長していることに加え、利益もしっかり改善している点です。
2023年は一時的な税金要因によって当期純利益が落ち込みましたが、本業の収益力が大きく低下したわけではありませんでした。
2024年以降は利益水準も回復しており、2025年には営業利益・当期純利益ともに高い水準を維持しています。
業績の推移を見る限りでは、サイバーセキュリティ需要の拡大を追い風に、着実な成長を続けている企業という印象を受けました。
財務状況は良好か?
| 年度 | 総資産 | 自己資本 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|
| 2021 | 4,204億円 | 2,160億円 | 52.1% |
| 2022 | 4,708億円 | 2,037億円 | 48.2% |
| 2023 | 4,926億円 | 1,706億円 | 43.0% |
| 2024 | 4,003億円 | 715億円 | 29.2% |
| 2025 | 4,222億円 | 778億円 | 30.2% |
トレンドマイクロは、高い収益性だけでなく、安定した財務基盤も持っています。
まず収益性を見ると、2025年の**ROEは28.2%、ROAは8.39%**となっており、資本を効率よく利益へ結び付けていることが分かります。2023年は一時的に利益が落ち込んだ影響で両指標とも低下しましたが、2024年以降は大きく回復しています。
一方で、気になったのが自己資本比率です。
自己資本比率は2021年の52.1%から2025年には30.2%まで低下しています。数字だけを見ると、「財務体質が悪化したのではないか」と感じるかもしれません。
しかし、有価証券報告書を確認すると、実態は少し違いました。
2024年には約1,000億円の配当と約400億円の自己株式取得という大規模な株主還元を実施しています。その結果、利益剰余金や自己資本が大きく減少し、自己資本比率も押し下げられました。
つまり、自己資本比率の低下は、事業が悪化したというよりも積極的な株主還元という資本政策の影響が大きいと考えられます。
実際、2025年末の現金及び現金同等物は2,305億円と非常に潤沢です。また、2025年の営業キャッシュ・フローは646億円と、本業から継続して多額の現金を生み出しています。
「自己資本比率が30%まで低下しているのは少し不安だ」と感じていました。しかし、有価証券報告書を読み進めると、その背景には大規模な株主還元があることが分かりました。もちろん、今後も高い配当を維持できるかは注視する必要がありますが、現時点では財務が急速に悪化している印象は受けませんでした。

株主還元と成長投資
企業が利益を稼いだあと、そのお金を何に使うのかも、投資するときの大切なポイントです。
利益を配当や自社株買いで株主へ還元する企業もあれば、新しい製品の開発や研究開発に使い、将来の成長につなげる企業もあります。
トレンドマイクロは株主還元に積極的な会社です。2024年には約1,000億円の配当と約400億円の自社株買いを行い、多くの利益を株主へ還元しました。
では、将来への投資はどうなのでしょうか。
有価証券報告書を見ると、2025年の研究開発費は約66.5億円で、前年より増えています。また、ソフトウェアなどの無形固定資産にも約217億円を投資していました。
もちろん、この217億円がすべて新しい事業への投資というわけではありません。既存サービスの改善や維持に使われているものも含まれていると考えられます。
そのため、「株主還元より成長投資を重視している」とも、「株主還元ばかりで成長投資が足りない」とも言い切ることはできません。
今のところは、株主還元と成長投資のバランスを意識した経営をしているように感じました。
AI戦略にも注力
トレンドマイクロは2026年、Anthropicと連携し、生成AI「Claude」を活用したAIセキュリティ機能の強化を発表しました。
AIによる脆弱性の発見や分析を高度化することで、Trend Vision Oneなどのサービス強化を進める方針です。生成AIの普及に伴ってセキュリティの重要性が高まる中、このような取り組みは今後の競争力につながる可能性があります。
今後もVision Oneをはじめとする製品開発にしっかり投資を続けられるかを見ていきたいと思います。

株価評価
ここまで業績や財務を見てきましたが、どれだけ良い会社でも株価が高すぎれば投資しづらくなります。
そこで最後に、現在の株価が割安なのかを見てみます。
現在のPERは約23倍、PBRは約7.6倍です。PERだけを見ると極端に高い水準ではなく、これまでの推移と比べてもおおむね平均的な水準といえます。
一方で、PBRは7倍を超えており、一般的にはかなり高い水準です。ただし、トレンドマイクロは2024年に大規模な配当と自社株買いを実施したことで自己資本が大きく減少しており、その影響でPBRは高くなっています。そのため、PBRだけを見て「割高」と判断するのは適切ではありません。
配当利回りも約3%前後と安定しており、株主還元を重視する企業であることが分かります。
私としては、現在の株価は「極端に割安ではないが、高すぎるとも感じない」という印象です。
AIの普及やサイバーセキュリティ需要の拡大を考えると、今後も安定した成長は期待できます。一方で、その期待はある程度株価にも織り込まれていると考えています。
そのため、長期保有を前提に少しずつ買うのは十分選択肢になりますが、大きく株価が調整する場面があれば、より魅力的な買い場になると考えています。

リスク
どんな企業にもリスクはあります。トレンドマイクロも例外ではありません。
① サイバーセキュリティ市場の競争激化
サイバーセキュリティ市場は今後も成長が期待されていますが、その分競争も激しくなっています。
CrowdStrikeやPalo Alto Networks、Microsoftなど海外の大手企業との競争が続くため、新しい製品やサービスを提供し続けられるかが重要になります。
② 円高による業績への影響
トレンドマイクロは海外売上の割合が高いため、円高になると海外で稼いだ利益を円に換算した際に減少する可能性があります。
業績を見る際は、為替の影響にも注意が必要です。
③ AIによる変化への対応
AIは大きな追い風である一方、攻撃する側もAIを活用する時代になっています。
新しい脅威へ迅速に対応できるかどうかが、今後の競争力を左右すると考えています。
私の投資判断
ここまで業績や財務、株価を見てきましたが、私はトレンドマイクロを中長期で注目したい銘柄の一つだと考えています。
適正な株価を見極めるのは簡単ではありません。しかし、今年2月の安値をつけて以降は安値を切り上げる動きが続いており、長期チャートでも底打ちしたような印象を受けます。実際、2026年2月24日に年初来安値4,789円を付けた後は、切り返す動きが見られます。
また、サイバーセキュリティは今後も成長が期待できるテーマであり、私はポートフォリオに組み入れておきたい銘柄の一つです。仮に下落しても、高い株主還元姿勢が、株価を下支えすると考えています。
そのため、株価が調整する場面があれば、少しずつ買い増していきたいと考えています。
免責事項
本記事は、公開資料などをもとに作成した個人の分析・考察です。内容には十分注意していますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。
また、本記事は特定の銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
※掲載している情報は2026年7月17日時点のものです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今後も気になる銘柄や投資に役立つ情報を発信していきますので、ぜひ他の記事もご覧ください。


コメント