この記事の前提:2027年3月期1Q決算と、2026年8月7日の筆者の購入判断を検証する記事です。掲載する3,200円は購入価格であり、現在値ではありません。
富士フイルムホールディングス(4901)は、2026年8月6日に2027年3月期第1四半期決算を発表しました。
売上高は第1四半期として過去最高を更新した一方、営業利益は前年同期比32.0%減となり、決算発表後の株価は大きく下落しました。
私はこの下落を受け、8月7日にNISA枠で富士フイルムを3,200円で購入しました。
ただし、「大きく下がったから割安」と単純に考えたわけではありません。今回の決算には、成長事業である半導体材料の好調と、期待されていたバイオCDMOの収益化遅延という、明確な強弱が表れています。
結論今回の急落は単なる過剰反応とは言い切れず、短期は慎重に見たい一方、3,200円前後は長期保有を検討できる水準と考えます。
注目点半導体材料の好調が続くか、バイオCDMOの収益改善がいつ確認できるか。
最大のリスクバイオCDMOの立ち上がり遅延が長期化し、利益計画の下振れにつながることです。
私の判断短期の反発狙いではなく、増配実績と配当余力を評価し、8月7日にNISA枠で3,200円で購入しました。
この記事で分かること
- 富士フイルムの2027年3月期1Q決算の要点
- 営業利益が大幅に減少した理由
- 好調な半導体材料と、不調なバイオCDMOの状況
- 通期営業利益予想が据え置かれた理由
- 短期投資とNISAでの長期投資で判断がどう変わるか
先に結論|短期は慎重、長期なら検討できる
今回の急落には、バイオCDMOの収益化遅延という明確な理由があります。そのため、単なる市場の過剰反応とは言い切れません。
短期的な反発を期待して「安くなったから買う」という判断には慎重です。次回以降の決算で、米国新拠点の立ち上がり状況やバイオCDMOの赤字縮小を確認する必要があります。
一方、3,200円前後では予想PERが約13.7倍、PBRが約1倍、配当利回りが約2.34%です。高配当株ではありませんが、長年増配を続け、配当性向にも余裕があります。
私はNISAで長期間保有し、増配を受け取りながらバイオCDMOの改善と企業全体の成長を待つことができる水準だと判断しました。

2027年3月期1Q決算の概要
| 項目 | 1Q実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8,265億円 | +10.3% |
| 営業利益 | 512億円 | -32.0% |
| 税引前利益 | 521億円 | -27.6% |
| 純利益 | 374億円 | -30.4% |
| 営業利益率 | 6.2% | 前年10.0% |
売上高は、メディカルシステム、半導体材料、イメージングなどが伸び、1Qとして過去最高となりました。
ただし、当四半期の平均為替レートは1ドル159円、1ユーロ185円です。為替影響を除いた売上高の伸びは2.7%にとどまり、表面上の10.3%増ほど本業が伸びたわけではありません。
営業利益率は前年同期の10.0%から6.2%へ低下しました。売上増が営業増益につながっていない点を、事業別に確認する必要があります。
4つの事業で明暗が分かれた

エレクトロニクス|半導体材料が高成長
- 売上高:1,277億円(前年同期比25.0%増)
- 営業利益:311億円(同38.2%増)
- 営業利益率:24.4%
今回最も評価できるのがエレクトロニクスです。AI半導体向けの需要を取り込み、世界トップシェアの銅配線用CMPスラリーやNTI現像液、先端レジスト、先端パッケージング材料の販売が伸びました。
為替影響を除いても売上高は16.2%増、半導体材料単体では19.5%増です。通期営業利益予想も1,060億円から1,200億円へ上方修正されました。
イメージング|instaxは好調だが利益率は低下
- 売上高:1,688億円(前年同期比16.2%増)
- 営業利益:434億円(同3.9%増)
- 営業利益率:25.7%
instaxは中高価格帯の製品や新製品が好調で、フィルムの供給量も増加しました。デジタルカメラもアジアを中心に販売が伸びています。
ただし、営業利益率は前年の28.7%から25.7%へ低下しました。銀価格や半導体メモリーなどの価格高騰に加え、為替影響などを除く営業利益は4.1%減となっています。売上成長だけを見て楽観するのは早いでしょう。
ビジネスイノベーション|一時費用で赤字化
- 売上高:2,732億円(前年同期比0.1%減)
- 営業損失:14億円
前年の海外BPO特需の反動、オフィス機器の販売減少、基幹システム刷新費用、体質強化費用などが重なりました。
通期営業利益は650億円から800億円へ上方修正されていますが、非中核資産の売却益増加による部分が大きく、事業そのものが急改善したと判断するのは難しい内容です。
会社はパーシャル・スピンオフを含む戦略的選択肢の検討を開始しました。実施する場合は2~3年後を想定しており、今後の企業価値向上策として注目します。
最大の懸念はバイオCDMO

ヘルスケアは売上高2,568億円と前年同期比12.4%増でしたが、営業損益は前年の43億円の黒字から127億円の赤字へ転落しました。
医療機器では内視鏡や医療ITが好調です。赤字化の主因は、成長投資を続けてきたバイオCDMOです。
- 米国ノースカロライナ新拠点の立ち上がりが想定より遅い
- 米国中小型設備で規制当局対応による計画外停止が発生
- 初期段階の案件受注が低調
- 一部商用品の製造・収益計上が後ろ倒し
バイオCDMOの売上高は577億円で、前年同期比では6.4%増ですが、為替を除くと3.6%減です。全体のEBITDAマージンも前年同期の収支均衡からマイナス二桁%へ悪化しました。
通期売上予想は3,000億円から2,800億円へ、ヘルスケアの営業利益予想は690億円から410億円へ下方修正されています。
一方、大型設備では約1億ドル、中小型設備では約3.5億ドルの受注を1Qに獲得しています。受注獲得がある一方で、初期段階の案件は低調です。需要が全面的に消失したとは言えませんが、生産体制の立ち上がりだけでなく、今後の受注獲得も確認する必要があります。
ただし、設備立ち上げと規制対応の遅れが長期化すれば、減価償却費や固定費だけが先行する状態が続きます。次の決算では、売上高だけでなく立ち上がり状況と収益性の改善を確認したいところです。
通期営業利益は据え置きでも安心できない

会社は通期営業利益予想3,650億円を据え置きました。しかし、セグメント別の内訳は大きく変わっています。
| セグメント | 前回予想からの修正 |
|---|---|
| ヘルスケア | -280億円 |
| エレクトロニクス | +140億円 |
| ビジネスイノベーション | +150億円 |
| イメージング | 変更なし |
| 全社・連結調整 | -10億円 |
バイオCDMOの悪化を、半導体材料、円安、非中核資産の売却益などで補う構図です。
売上高予想は3兆4,700億円から3兆5,600億円へ上方修正されていますが、為替影響を除くと前回予想比0.4%減です。「売上高上方修正」という見出しだけで好決算と判断しないほうがよいでしょう。
株主資本比率は63.2%。投資回収と資金負担を確認したい
- 営業キャッシュフロー:923億円
- 投資キャッシュフロー:-1,249億円
- フリーキャッシュフロー:-326億円
- 株主資本比率:63.2%
株主資本比率は63.2%ですが、この比率だけで財務の安全性を断定することはできません。営業CFと投資CFの合計はマイナスであり、投資回収と資金調達の動向を併せて確認します。一方、棚卸資産は前期末から663億円増え、有利子負債は807億円増加しています。
バイオCDMOを中心に大型投資を続けているため、今後は投資した設備が実際の利益とキャッシュフローを生み始めるかが重要です。
3,200円で購入した理由
私は8月7日、決算後に株価が大きく下落したところをNISA枠で3,200円で購入しました。
| 指標 | 3,200円での概算 |
|---|---|
| 予想PER | 約13.7倍 |
| PBR | 約1倍 |
| 配当利回り | 約2.34% |
| 年間配当予想 | 75円 |
| 予想配当性向 | 約32% |
| 会社予想ROE | 7.8% |
配当利回りだけを見ると高配当株ではありません。しかし、富士フイルムは長年増配を続けており、配当性向も30%前後と余裕があります。
また、バイオCDMOだけに依存している会社ではありません。半導体材料、医療機器、instaxを含むイメージングなど、複数の強い事業を持っています。
私は「バイオCDMOがすぐ回復する」と予想して購入したのではありません。複数の優良事業と増配実績を持つ企業を、決算不安で売られた場面でNISAにより長期保有する、という判断です。
短期投資と長期投資では判断が変わる
図解|短期と長期で、確認する時間軸が違う
バイオCDMOの収益化に不安
「下がった」だけでは根拠が弱い
次の決算で改善の兆しを確認
購入価格:3,200円
年間配当予想:75円
予想配当利回り:約2.34%
予想配当性向:約32.0%
2026年8月の購入価格と1Q発表時の会社予想で計算。増配・利益回復は保証されず、長期でも投資の前提を点検します。
短期目線では買いを急がない
今回の下落には理由があります。バイオCDMOの利益見通しは悪化しており、次回決算で改善が確認できなければ、業績不安が長引く可能性があります。
短期的な反発だけを期待して「下がったから買う」のであれば、現時点ではあまり期待できないというのが私の考えです。
NISAでの長期保有なら検討できる
NISAで長期間保有するなら、短期的な業績悪化だけでなく、配当、複数事業の競争力、財務の健全性、将来の利益回復まで含めて判断できます。
私は3,200円前後なら、増配を受け取りながらバイオCDMOの改善を待ち、企業全体の成長を長期で見ていける水準だと考えました。
購入判断を検証する|次の決算で何を見るか
ここまでの購入理由は、2026年8月7日に3,200円で購入した当時の判断です。「長期で持つつもりだから、その後の悪化は見なくてよい」という意味ではありません。ここでは、その判断を今後検証するためのチェック項目を整理します。新しい売買を実施したという記録ではありません。
図解|長期投資でも、待つ理由を点検する
新拠点の立ち上がりが進む
赤字が縮小する
他事業が利益を支える
遅延・下方修正が繰り返される
受注と収益性がともに悪化する
財務・配当余力が低下する
機械的な売買ルールではなく、投資の前提が維持されているかを判断するための整理です。
| 確認対象 | 改善を判断する材料 | 注意する変化 |
|---|---|---|
| 米国新拠点 | 製造・出荷の進展、売上寄与の拡大 | 立ち上がり時期の再延期、追加費用 |
| 中小型設備 | 規制対応と稼働再開についての会社説明 | 計画外停止の長期化、顧客案件への影響 |
| バイオCDMOの採算 | 為替影響を除く売上とEBITDAマージンの改善 | 売上が増えても損失が縮まらない |
| 他事業による下支え | 半導体材料の成長、本業での利益確保 | 資産売却益に頼る構図が強まる |
| 資金と配当 | 投資回収の進展、営業CFと投資負担のバランス | 借入増加、減損、配当方針の変更 |
稼働率や拠点別利益が開示されなければ、数値を推測して埋めることはしません。会社の説明、売上、事業の利益率など、確認できる情報を組み合わせて判断します。
配当利回り2.34%は「購入価格での予想値」
年間配当予想75円を購入価格3,200円で割ると、予想配当利回りは約2.34%です。予想EPS234.19円を用いると、予想PERは約13.7倍、予想配当性向は約32.0%になります。いずれも2027年3月期1Q発表時の会社予想を前提とした計算で、現在の株価での指標ではありません。
前期の年間配当70円に対し、今期は75円の予想ですが、将来の増配が保証されているわけではありません。利益が落ちれば配当性向は上がりますし、大型投資が続く企業ではキャッシュフローも併せて確認したいです。
NISAは税制上の制度であり、企業の業績悪化や株価下落を防ぐ仕組みではありません。私は長期目線で購入しましたが、改善を待つ理由そのものが崩れていないかは、決算ごとに点検する必要があると考えています。
購入した週の記録は神戸物産と富士フイルムを購入した株日記にまとめています。数字の読み方を確認したい方は、キャッシュフローの見方も併せてご覧ください。
まとめ
富士フイルムの2027年3月期1Q決算は、半導体材料の高成長が確認できた一方、バイオCDMOの収益化遅延が強く意識される内容でした。
営業利益予想は据え置かれていますが、ヘルスケアの悪化を、エレクトロニクス、非中核資産の売却益、円安などで補っています。見かけ上の据え置きより、中身を慎重に確認する必要があります。
したがって、今回の急落を単なる市場の過剰反応として短期的な買い場と判断するのは難しいと思います。
一方、私はNISAでの長期保有を前提に、3,200円で購入しました。高配当株ではありませんが、増配実績と配当余力があり、半導体材料、医療機器、イメージングなどの強い事業も保有しています。
今後は、バイオCDMOの改善を確認しながら、良い結果になった場合だけでなく、想定と異なる結果になった場合もこのブログで振り返ります。
購入後の振り返り:富士フイルムを3,200円でNISA購入|保有を続ける理由と、買い増ししない理由では、その後も保有する理由と、下落だけを理由に買い増ししない考え方を整理しています。
出典・情報確認日
対象資料:2027年3月期 第1四半期決算短信、2027年3月期 第1四半期決算説明会資料
当初の分析・購入判断:2026年8月時点
決算資料の再確認日:2026年9月16日
※本記事は筆者自身の投資記録と公開資料に基づく分析であり、特定銘柄の購入や売却を推奨するものではありません。記載した数値は資料作成時点のものです。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
企業分析で使った基礎知識
この記事で使った指標や分析の流れは、次の基礎記事で詳しく解説しています。
2026年9月30日追記:株主資本比率だけで財務の安全性を断定しない表現に修正し、購入後の振り返り記事へのリンクを追加しました。


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